山には色々な虫が居る。いつの間にか足先が膨れて痛かったり痒かったりする事がある。でも、一番嫌な虫はカメムシとゲジゲジである。標高が高いので蚊は殆ど居ない。これらの中で定期的に大発生し、家の中にも無差別に大量に現れるカメムシとゲジゲジは都会の人にとって大きな脅威である。更に最近はスズメバチが増えているようで、新しい脅威になりつつある。
ゲジゲジゲジゲジは5~7センチのムカデのような甲冑類で、通常7年ごとに大発生すると言われ、一度発生すると翌年も少し現れ、次の年には一匹も居なくなると言う徹底した発生の仕方である。季節で言うと、10月前後のある短い期間に大発生して一、二ヶ月もしない中に、全くいなくなってしまう。
八千穂には6年前に大発生した。その時は、八千穂だけでなく長野県、山梨県全域に大発生した。その量は一平方メートル当たり10匹から100匹のオーダーで家の中にも大量に入り込んでくる。何処から発生するのか分からないが、ものすごい量である。普通の家の造りは隙間だらけであることがよく分かる。
六年前の1993年には、家の前を縦横無尽に這い回り、車で潰すと中から出る油で車がスリップするほどであった。小淵沢と小諸を結ぶ小海線は線路を渡る大量のゲジゲジを踏みつぶし、列車がスリップしで動けなくなったと言われている。
もし七年周期なら来年2000年がその年に当たる。我々としては二度目の経験になる筈である。効くかどうか分からないが、今年は蟻、蜂、ゲジゲジ用の薬剤を今から大量に撒いて予防する予定である。実際には広い地域で発生するため、自分の小屋の周りだけの対策ではどれほどの効き目があるか分からないが、できる限りの対策をするつもりである。
多分土の中に有る卵が孵化するのであろう。どのくらいの深さなのかも分からない。今から嫌な予感がする。
夏に、ホームセンターに行ってみると、ゲジゲジに効くと言う粉末の薬があった。どの程度効くか分からないが、とりあえず買ってきて、半信半疑ながら家中のコンクリートの土台の周りに散布した。
1999年の9月頃になって、ある日、土台の周りの土の出ている所を、何気なく見ると、干からびて丸まったゲジゲジの死骸がかなりあった。六年目であるが、既に一部発生したのである。薬の効き目か、生きて這い回る姿はなかった。薬のお陰で嫌な思いはせずに済んだが、甲冑に包まれた、あの丈夫そうな虫に効く薬とは、一体なんだろうと、逆に薄気味悪さを覚えた。
六年目に当たる昨年は少し発生したが、その前に撒いた薬で効いたことから、大発生は済んだと思っていたら、2000年10月20日(金曜日)の夜のことである。小屋に入って何気なく座敷を見ると、干からびたゲジゲジが一匹転がっていたので小型掃除機で吸い取った。
翌日、茸を見てこようと小屋の廻りを歩いてみて驚いた。小屋のコンクリートの土台とその周辺の地面に、大量のゲジゲジが発生していた。去年の夏に撒いた薬が効いていたのか、半分以上死んで干からびてはいたが、まだまだあちこちに這い回っている。
どうやら、昨年はほんの少し発生して、今年が本番であるらしい。濃い茶色や薄い肌色のゲジゲジが蠢くのは何とも気持ちが悪い。一平方メートル当たり何十匹もいる。建物から数メートル離れると、急に少なくなるが、それでも林の中の落ち葉の中にもいる。やはり七年周期で大発生する事が判明した。
昨年コーキングを詰めて、かめ虫とゲジゲジが家の中に入ってこないように対策をした。床下と家への隙間を徹底的に埋めたため、今回は家の中には殆ど入ってこなかったので助かった。
早速里へ下りて粉と液体の薬を二本買い求めて再び家の周囲に撒いた。時間が経つに従って、どんどん増えていく。翌朝には、二倍になっていた。家の廻りには丸くなって死んだゲジゲジが掃いて捨てるほどいた。まだ生きているゲジゲジも、うようよと這い回っている。薬は数時間後に効くという。すっかりいなくなるのは東京に帰った後だろう。
かめ虫
もう一つの嫌な虫はカメムシである。昨年隣の山荘に久しぶりでやってきた篠崎さんの奥さんが、家に入るなり大声を上げて飛び出してきた。大量のカメムシにびっくりして我が家に駆け込んできたのである。こればかりは山に慣れた我々でも何ともしてあげられなかった。
我が家の外壁にも大量のカメムシがへばりついている。何年か前、それらに一匹づつ殺虫剤を撒いたらアルミのサイディングが薬で赤い斑模様になってしまった。いくら拭いても取れなかった。せっかくの白いアルミのサイディングが台無しになった。殺虫剤のメーカーに問い合わせても埒があかなかった。自分で色々試したらシンナーで綺麗になることが分かった。外壁全てをふき取るのに何日も掛かった。
カメムシは触ったり脅かしたりすると例の強烈な匂いを発する。動く物には何にでも飛びつく猫も近寄らない。この虫もゲジゲジと同じくぺったんこな虫で、家の隙間から大量に入り込んでくる。こちらは飛ぶので更に始末が悪い。動きはそれほど俊敏ではないので数が少なければ捕まえて潰すことができるが、大発生の時は家の中に1000匹は出てくる。採っても採っても減らない。夜寝ていると飛んできて顔にも止まる。ゲジゲジと違って大発生の後、急には減らず毎年発生する。
瞬間に潰せば、臭いを出す暇がないので何とかなるが、数が多いので採りきれない。
昨年はあらゆる隙間をコーキング剤で埋めた。例えば、天井に着いている照明の電源引き出し線は、天井に大きな穴が空いており、グローブが被せて有るので一見分からない。そこから入ってきた虫は、グローブにある隙間から部屋に侵入する。従って天井の電源引き出し部の穴をコーキング剤で埋めた。
しかし天井板にもデザインや化粧のために両端部に沢山の隙間がある。それらは殆ど手に負えない。
風呂場などのように水漏れ対策を施した場所でも、大量に入ってくる。隙間と分かる部分をコーキングで埋めても、余り効き目がない。サッシの敷居が僅かに空いているため、ここから忍び込むらしいが、その内側の木製の引き戸には、殆ど隙間がないように見えるが、何分かすると必ず数匹は出てくる。じっと見続けるわけには行かないので侵入口はなかなか分からない。
最近、地下の南側の階段に使っているブロックを剥がしてみたら、裏にべったりカメムシが着いていた。どうやら地下の土や砂利の中で繁殖するらしい。スミチオン殺虫剤を十分撒いたが、それほど効果がなかった。今年はそれらしいところを狙い打ちするつもりで居る。
何でもそうであるが、嫌なものは元から断たねば駄目である。来年は出始めたら、出入りする瞬間の場所を見付けて対策をするつもりである。